「つかさ、黒沢くんがこー言う所って珍しくない?」
「珍しいと言うより見た事ない」
「しかも女のジャンルが変わってるし」
「ジャンルって、」
「だってギャルばっかだったじゃん」
「あー…そっか」
もう会話が会話だ。
まぁ、考えてみりゃおかしいとは思う。
あの男が喫茶店に入ってるって事、自体変な光景だ。
ごめん、誘って。
「悪りぃな」
電話を終えて戻ってきた颯が椅子に腰を下ろすと同時にあたしは席を立った。
「出よう」
「は?何で?」
「居心地悪いから」
グッと颯の腕を掴んだあたしに、颯は呆気にとられたかのように唖然とする。
「悪いって何が?」
「空気が」
「空気?」
「もう食べたからいいの」
払うと言ったあたしに颯は“いい”と言ってまた払ってくれた。
正直、こうもなると申し訳なく感じてくる。
「おーい、美鈴!」
先行くあたしの背後から颯の声が飛び交う。
「待てって」
続けられた言葉と同時に掴まれる腕。