「美味いのかよ」
運ばれてきたモンブランケーキを頬張るあたしに颯は珈琲のグラスを手にしたまま視線を送る。
「美味しいよ。食べる?」
「いらね」
「結構あたしさ、いけちゃうかも」
「何が?」
「ケーキだよ。普通に3~4個はいけちゃうよ」
「はぁ!?マジで?そんな食ったら気分悪くなんだろーが」
「平気」
フフッと微笑むと颯は呆れた顔をしてあたしを見る。と同時に取りだした颯の手にある携帯が光っていた。
「ちょっと悪い」
そう言った颯にコクンと頷くと颯は携帯を耳に当てながら席を立つ。
その颯が居ない間にあたしは嬉しそうにケーキを突いた。
「えっ、やっぱそーじゃん。黒沢くん女いるじゃん」
秘かに聞こえた声に思わず神経がそっちに行ってしまった。
ケーキを頬張りながら視線を何気なく向ける先には他校の制服の女達。
…あいつ、どんだけ有名なのよ。
って言うかあたし彼女じゃありませんから。
そう言えるものならハッキリ言ってやりたいけど、言えないのが現状。
長電話してんのか暫く経っても帰って来ない颯。
周りの視線がなんかこっちに向いてるようでジッとしてらんない。