「つか別にここじゃなくても良くね?」


颯は周りを見渡す様に視線を動かす。


「だって嫌だもん」

「は?」

「あんな大人数の中の下校中、嫌だよ」

「別にどーでもいいだろ」

「アンタが良くてもあたしが嫌なの!」

「はいはい」


面倒くさそうに呟いた颯は壁から背を離し足を進めて行く。

そんな背中を追いかける様にあたしは後を追った。


「ねぇ、それよか鞄は?」


暫くして気付いた。

鞄を持たずに両手をポケットに突っ込んで歩く颯。


「家」

「はっ?」

「だから家」

「アンタもしかしていつも持って来てないの?」

「だって必要ねぇじゃん」

「いやいや、教科書は机としても必需品あんじゃん」

「必需品ここ」


そう言った颯は両手をポケットに突っこんだまま揺する。

そこからはジャラジャラと鍵のような音がした。


「鍵だけ?」

「あと携帯とタバコのみ」

「へー…なんか凄いね」

「何が?」

「鞄持って来ない奴、初めて見た」

「あー、そう。良かったじゃん見れて」

「いやいや、そー言う事じゃないから」


やっぱ、変な奴。

噂は全然良くないけど、でも何故かしんないけど、あたしは悪い奴じゃなさそうって、そう思ってしまった。