「ちょっと、ちょっと美鈴!!」


入った瞬間、声を荒げたのは千佳(ちか)。

だから何故か嫌な予感がした。


「おはよ」


何気に言った言葉を無視されたあたしは何故か千佳に腕を掴まれ再び教室を出た。


「ちょっと美鈴!2年の黒沢と付き合ってるってホント?」


やっぱ、そうきたか。

どこでどう流れてんのか知らないけど、颯が話してた通りだった。


「あー…」


思わず言葉を捻ってしまった。

いくらなんでもあたしは“フリしてるだけ”なんて千佳にも言えない。

千佳はちょっと口をすぐに滑らせちゃう傾向があるから言えない。


もしそんな事になってしまうと、あたし絶対あの男に殺されちゃう。


「あー…って何?すっごい噂だよ、あの黒沢と付き合ってるって!」

「……」

「どーしたのよ、美鈴!!彼に振られたから即効男…じゃなくて、なんでまたあの黒沢なのよ!!」

「……」


どうも、あの黒沢って奴は相当らしい。


「絶対やめなってば!!美鈴はさ、そー言うの全くの無関心だけど、あの男のいい噂なんて一つもないんだから!!」


何故か必死になって言ってくる千佳に思わず顔が引きつる。

だって、仕方ないじゃん。


あたしだって嫌だよ。