「なぁ、お前マジであの日浦美鈴と付き合ってんのかよ」
聞こえて来たこえに絶句しそうになった。
たしかに彼女役とは言えども、誰がそんな事言った?
って言うか、“あの”って何ですか?
「あー…もう噂飛び散ってんの?」
「その話しで持ち切りになってんぞ」
「マジか。アイツ言うの早ぇーよ」
アイツって誰?
いやいや、あたしじゃないし。
「つかマジで?」
「いや、そー言う事になってるだけ」
「はぁ!?お前、女役頼んだって事かよ」
「いや、どーする事も出来なかったんだよな。んで、たまたま居たのがあの美鈴って女」
…だから“あの”って何?
「つかよ、お前。あの女と居るっつーことは、周りの男を的に回すっつー事だからな」
「は?…んだよ、それ」
「綺麗、綺麗って騒がれてんのに。けどまぁ、お前に突っかかる奴はいねぇと思うけど」
「つか俺、興味ねぇし」
「お前、マジ女好きじゃねぇよな」
「つか面倒くせぇんだよ。ワガママな奴ばっか」
ケラケラと友達が笑う声。
正直、呆れて何も言う事がない。
と言うか、この話しで持ち切りだと言っていた。
つか冗談じゃない。
本当に付き合ってたら仕方ないってのもあるけど、嘘の付き合いなのにそんな風に言われちゃ耐えられない。
アイツ如きに承諾したあたしも馬鹿だが、何でアイツの為にこんな事になってしまったのかも意味不明。
ちょっと苛立つ感情を抑えながら教室に入った時は既に休み時間だった。