「じゃ、付き合ってる?とでも言われたら適当に“うん”とか言っとけよな。あー…ちなみに俺、黒沢はや――…」
「えっ!ちょっと、待って…」
名前を告げる瞬間にあたしは思わず声を上げ遮った。
つか、今なんて…?
「あ?何?」
「今、黒沢って言ったよね?」
「言った」
「黒沢って、あの黒沢?」
「は?」
「アンタもしかして2年?」
「そう。だから何?」
「何ってアンタ、悪やってたんでしょ?」
「まぁ、あながち間違ってねぇけど…」
「アンタの噂、嫌って程、耳に入ってくんの!中学ん時から荒れまくってて、おまけに人刺したんでしょ!?」
だって、あたしが2年になった時、黒沢って奴がここに入学したって嫌程聞いた。
その挙句、端正だけど一匹狼で喧嘩中に人を刺したとか。
顔すら興味はなかったものの、あれほど噂が飛びちりゃ嫌でも耳に入る。
そんな記憶を辿ってると、フッと秘かに笑う声が耳に張り付いた。