「もう帰るから」
早くこの場を去りたいと思ったあたしはフイっと顔を背け背中を向ける。
そして足を進めようとした時、
「あー…最低2カ月。俺の彼女役宜しく」
ありもしないその言葉に、再び慌ててあたしは振り返った。
「は?何でっ、」
「何でって、さっき俺の女って言っちまったし」
「いやいや、それはアンタが勝手に言った事でしょ?」
「だから宜しくっつってんじゃん」
「それは困る」
「俺もそーしねぇと困る」
「は?何でよ」
「他の女寄せつけたくねぇから」
「何それっ!!」
思わず発した声があまりにも大きくて、自分でもビックリするくらいだった。
「まぁ、何つーの?そうしとけばアンタにも好都合って事もあるし、役にたつかも知んねぇよ?」
「いや、ないから」
「じゃ、日浦美鈴は振られて号泣してました。…とでも言っとこかな」
颯はサラっと言葉を流して少し口角を上げる。
なんなの、この男!!
「号泣なんてしてないから。涙一滴も落ちてないから」
「あー…じゃあさ――…」
「あー!!もう分ったよ、もう面倒くさいの、そう言うの!2ヶ月でいいんでしょ?」
「あ、やっとその気になった?」
「その気じゃないけど、引こうとしないアンタが面倒なの!!」
声を更に張り上げたあたしに颯はフッと笑った。