「コイツの事スキだからもうお前とは会わねぇから。じゃあな、」

「は?何それ!バッカみたい!!」


弾ける女の声が自棄に大きすぎて、耳が痛かった。耳を擦りながら腕を掴まれ店を出る。


“コイツの事スキだから――…”

その言葉は彼から言ってほしかったの。


アンタじゃないの。

ゴメンだけど今、会ったばかりのアンタじゃないの。


「あー!!ダルっ!!つか、マジ面倒くせぇ…」


店を出て少し離れた所で繋がれていた手がスッと離れる。

颯は顔を顰めたまま、ため息とともに大きく伸びをした。


「つか、アンタ…」


ため息交じりに出る言葉。

呆れて何も言葉が出て来ない。


「つかさ、もっと上手くやれよ」

「は?」

「バレたらまた面倒になるしよ」

「アンタ、マジ最低」

「じゃあ言ったら来たのかよ」

「行くわけないでしょ!!」

「だろ?」

「だろ?…じゃないでしょ!!あたしの大事な時間を返せっ!!」

「あー…時間って、真剣に携帯と向き合う時間?」


そう言って颯は首を傾げながらあたしを見下ろした。


そうなの。

そうなんだよ!!

大切な、時間だったの!!


だからなのかも知れない。

あたしの感情が思わず口から出てた。