ヤンキー王子とラブレッスン④【完】

「……どうしたの?」


キョトンと首を斜めに傾けて。


振り向いた先、あたしが見たものは……。


「……五十嵐……くん……」


壁にもたれかかるようにして、あたし達を見つめる五十嵐くんの姿。


相変わらずカッコよくて、相変わらず堂々としていて。


一瞬で、目も心も奪われたけど……。


あたしは、がんばって瞳をそらした。


だって、五十嵐くんは……。


どんなに思っても、あたしの手には届かない人……なんだもん。


好きで好きで……。


今でも好きで……仕方がないけど。


あたしの手には……届かない人……なんだもん。


だったら……。


見ないようにして……。


この想いに……フタをするしか……方法ないよね?

むなしいとか、寂しいとか、考えずに……。


フタをした上から……他の男の子をドンと乗せるの。












それは、もちろん……。


五十嵐くんのこと……。


思い出す隙間もないほどに。







7月のはじめごろ。


杏ちゃんに……放課後、カラオケに誘われた。


杏ちゃんのおウチの車で行くっていうから、エントランスで待っていてくれる高柳さんに連絡をして……。


それからあたしは、杏ちゃんのおウチの車に乗った。


杏ちゃんとは……。


五十嵐くんのことで、あんなことがあったけど……。

あたしが五十嵐くんと別れて、かずくんと付き合ってから……。


急に、仲良くなった。


もちろん……“あんなことしてごめんね”って、前にも謝られたけど……。


今では、そんなことも気にならないくらいの仲良し。


繭ちゃんや花音ちゃん達のグループの中でも……杏ちゃんが一番仲がいいと思う。


あたしとは違って、流行に敏感なところも。


あたしと違って、ばっちりメイクをしているところも。
もちろん……あたしと違って、派手で目立つところも。


全部全部憧れで、全部全部がとても新鮮。


だから、かずくんと付き合い始めて以降は……杏ちゃんと遊びにいくことが多くなった。


カラオケにショッピングに、映画に、ごはん。


杏ちゃんは、あたしをいろいろなところに連れていってくれて、いつもたくさんの刺激をくれる。


大好きな大好きなお友達。


だから、今日もウキウキしながら、カラオケに向かったのだけど……。
なんだか今日は、様子が違った。


だって……。


部屋に入って、飲み物を注文したりしていると……。


「おー! 杏!!
久しぶり~♪」


制服を着崩した……めちゃくちゃ派手な男の子が数人、部屋の中に入ってきたから。


「……えっ?」


なんだろ……。


この人……達……。
もちろん……。


『おー! 杏!!
久しぶり~♪』


……って言ってたし。


今でも、仲よさそうに杏ちゃんとしゃべっているから……。


杏ちゃんのお友達……なんだと思う。


でも、どうして?


いつもは、ふたりで遊ぶのに。


それから……。
あたしが男の子を苦手なこと……杏ちゃんだって知ってるハズなのに。


それなのに、どうして……。


「ねぇ~心優。
いいでしょ~!?
今日は、雄二達、みんなで盛り上がろう~!!」


こんなことを……言ったりするの?


あたしだって、最近は……。


徐々に男の子に慣れてはきたけど。


それでも……。