ヤンキー王子とラブレッスン④【完】

その言葉をあえて飲み込んで……。


バババッと……。


焦って、かずくんの服を掴んだ。


「だから……。
い……言わないでっ」


“2回とも、あたしの意思なんかじゃない!!”


すると……。


あたしの手の上に自分の手を重ねたかずくんは、あたしの手を、ゆっくりと洋服から離させながら、にっこり笑った。


「心優、掴むな。
これ、撮影用の服だから」
「……え?
撮影……用……?」


「そ。
オレ……。
……って、まぁ、いいか。
こういうことは、一気にバラしたほうが面白いし、な」


意味のわからないひとり言を呟いて、かずくんはあたしの頭をポンポン叩いた。


「べつに、オレも鬼じゃないし?
言わないでいてやってもいいよ?」


「……え?」


「だーかーら。
煌に言わないでやってもいいって」


かずくんは、天使の笑顔で優しく笑う。
でも、この天使の笑顔の裏には……。


「その代わり。
ひとつ条件がある」


……いつも悪魔が潜んでいる。


「……な……に?」


ゴクリと生つばを飲み込むあたしを見おろし……。


かずくんは、クスリと冷たい笑いをのぞかせ、ゆっくり言った。






「キスのこと。
煌にバラされたくなければ、オレと付き合え」





「……えっ!?」


驚いて、大声を出したあたしの肩を抱きよせ……。


「だーかーらー。
言い換えれば。
優しいオレは、心優に、選択肢を2つやるって言ってんの」


「…………」


かずくんはあたしの耳に、妖艶な声を流し込む。


「どっちを選ぶかは、心優次第。
でも、煌、傷つくだろうなぁ」


「……え?」


「心優がキスしたことあるのを知ったら」


「……っ」

「だって、煌。
男ギライで、男慣れしてないから、心優のことを気に入ったみたいだし?」


「…………」


なにも反論できないあたしを、さらにかずくんは追い詰める。


「それなのに。
キスは、とっくの昔にすんでました。
しかも、煌の友達と!」


「…………」


「……とか、マジで、プライド傷つくんじゃん?」


「……っ」
「だって、それ。
清純なフリした心優に、騙されてたってことだもんな?」


かずくんは、言葉を落とすと同時に、あたしのおでこをツンツン突いた。


「心優、悪い女~♪」


「ち……ちがっ……。
だ……騙してなんかっ……」


大声をあげたあたしに、かずくんはクスクスと意地の悪い笑顔を落とす。


「でも、心優。
言ってないんだろ?
だったら、同じことじゃねぇ?」


「っ……。
そんなこと……」

“ないもん……”


わざと言わなかったんじゃないもん。


言う必要……ないと思ったから……。


でも……。


『この前、初めてのキスをした心優ちゃんには。
今日のことは、ちょっと刺激が強かったかな?』


『おまえの初めては。
全部俺が教えるんだから』

煌は……。


あたしのファーストキスは、煌だと思ってる。


だったら、かずくんにキスされたことがあること、煌に言ってないってことが……。


あたしが煌のことを騙していることになるの?


「…………」


黙り込むあたしの上、かずくんはさらにあたしを追い詰める言葉を落とす。
「それに、“付き合ってる彼女が、他の男にキスされた”とか。
オレだったら、イヤだけど?
心優、今、オレにキスされたよな?」


「……っ」


「そんな心優。
煌にキラわれるんじゃねぇ?」


「……えっ!?」


でも、今のキスも、かずくんが無理やり……。


そんな言葉を飲み込んだのは……。


さっきの煌の言葉を思い出したから。