「ふっ、せいぜい頑張れ。
言っとくけど、これは理想なんかじゃなく、近い未来に起こることだから」
「そんなわけっ」
下を向いていた顔を上げながら言いかけて止まった。
だって、あまりにもっ、
「たっくんのバカ!ち、近い」
10cmもないたっくんとの距離に、男に免疫がないあたしは頭が“くらっ”とした。
いや、たっくんはカッコ良すぎるのだ。
「あ、その呼び方止めろよ。竜騎って呼べ」
今度は口調に合わず、甘えるような上目遣いで言われた。
…もうっ、
「た、つき」
「それじゃダメ」
「っ、竜騎」
んー、なんて顎に手を当てた後に
「まぁ最初はこんなんで良いか」
なんて言われた。
「あたしは犬じゃありません!」
負けっぱなしが嫌で、せめてはっきり言い放ったつもりだったのに…
「よくできたね、よしよし」
ああ、やっぱりあたしはコイツに勝てない。