甘い匂いの正体に気付き、もう秋なのかと実感。
都心では香らないからか、すっかり秋の風物詩を忘れていた。
彼も冷たい風に運ばれてくる金木犀の香りに反応して、懐かしそうに深呼吸をしている。
いつのまにか緩められていた手が、深呼吸をしながら、そぉっと私の右手を握った。
この甘い香りのせいで、なんか私、勘違いしてるかも。
…今、すごく幸せな気がする。
そっと触れた彼の右手を握り返すと、左手できゅっと身体を抱いてきた。
なんとなく拒まずに身体を寄せると、彼は嬉しそうに、そんな私を抱いたままレストランに向かったのだった。
end.