二人羽織りみたいな恰好、周りは彼の匂いでいっぱいで、逃げようにも大きな手は私の華奢な身体をがっちり掴んで離さない。
 あたふた暴れてみたけど完全に無駄、逃げ場のない状況が恥ずかしくて、私は顔を伏せた。


「身体つめたー…冷えきってる、風邪ひいたらどーするの、もう…」

「…あり、がと。」

「…ふふ、可愛いなぁお前は~っ」

「…あ。」

「ん、どーした?」

「この匂い、あれだ。」

「匂い、って…あぁ、この辺、金木犀の香りがするね?
懐かしいなぁ、もうそんな時期か…」