ヒュウウと風が顔に当たる。



「ちょっと、どこに行くのよ!?」


目の前の背中に向かって問いかける。


「すぐわかります」と言うだけで、まったく説明をしようとしない魔法使い。


はぁ、と意味のわからない私はため息をつく。




僕に付いて来て下さい。と言った後、魔法使いは私を抱き抱え、突然玄関の扉を開き、現れたホウキの後ろに私を乗せ、飛び立った。


なんなのよ…。とグッタリする。
自分で飛ぶから下ろしてと言ってみたが、すぐですから。と、取り合ってもらえなかった。


そして、魔法使いのホウキに乗ったまま現に至る。まさか、魔法使いのホウキに乗る日が来るなんて思いもしなかった。



徐々に高度が下がって来たので、目的地が近づいたのだろう。

雲の下に出ると…


「わぁっ」


巨大な城が目の前に現れた。

こんな間近で城を見たことがなかった私は、思わず感嘆の声を溢す。


「すごい…」


「もうすぐ降ります」


魔法使いの言葉に、城に見とれていた私は、ハッと現実に引き戻される。


「降ります…って、まさかお城に!?」


「ええ」

こちらに振り向き、さも当然と言う風に笑う。


「ちょ、ちょっと待ってよ!お城だなんて、私が入っていいの!?」


不安になり訊ねると、きょとんとした顔の後、魔法使いに「僕が一緒にいますから大丈夫です」と言われた。


おいおい。本当に大丈夫なのか、と心の内で思う。


そうこうしている内に、城の正面まで降りてきた。