山中でしおれて壊れた花冠が落ちているのを見た紫狐は駆け寄り、手に取った



「これ、ぼくがあげた花冠だ…」


「粋なことするじゃねぇか……てことはこの辺に居るか、僅かに妖気を感じるしな」



こっちか、と十六夜を抱っこして進んでいく天堂を後ろからついて行っている紫狐は尊敬していた



自分が一月探しても見つけられなかった白狐の妖気を僅か数時間で感じ取れた


さすが、あの百鬼夜行の前総大将




どんどん近付いてくる妖気だが一歩先は急斜面の坂になっていた



「この下か。十六夜、いい子でこいつと待ってろ」


十六夜を下ろして坂を下りていく天堂をはらはらしながら見ていた紫狐は十六夜に顔をすりよせ、きゅうんと鼻をならした



十六夜は幼女なため紫狐の顔が十六夜の身体とほとんど同じ大きさだった