ブラック王子に狙われて②



10分くらい悩んだ絢は、ブツブツ文句言いながら

『お願いごとは別のに使うから買わない』と言い出した。

トータル5つのお願い券を手にしている絢。

1つは予め決めていたみたいだけど、

残りの4つは決まったんだろうか?


カフェでアイスティーをテイクアウトし、

俺らは飲みながらお土産物屋さんを散策。

琉球硝子のお店を見つけて、

絢とお揃いのグラスを購入した。

それから、やちむん(沖縄の焼き物)の店で湯呑みを購入。

お互いの家に置いて、ペアグラスとして使おうという事になった。


なんか、こういうのいいな。

今まで毎日のようにお互いの家で夕食したりお茶したりしてるのに

器を気にかけた事がなかったから。

絢から言われるまで、気付かなかった。


「絢、せっかくだから、お茶碗とかも買うか?」

「いいの?」

「ん」


親からお小遣いをたんまり預かって来た。

普段どこにも連れ出さないからだと思うけど

『絢ちゃんに嫌われないように』と物で釣る作戦取れって。

親がそれ言うのってどーなの?と思うけど。

正直、本当にデートらしいデートもあまりしてないから

今回ばかりは全日甘やかそうかと思ってる。



17時過ぎに戻ると、既に夕食の準備がほぼ終わっていた。

ケータリングを手配してあったみたいで、

庭に豪華なBBQセットが用意されている。

ユウとユウの彼女は昼寝してるらしくて

俺と絢は早速買って来たグラスを使う為にキッチンへと。


「わぁ、綺麗なグラスね」

「ありがとうございます。千穂さん達もお土産にどうですか?」

「瑛太~、私もこういうの欲しい~~」


絢がお土産に勧めたら、千穂さん旦那さんにおねだりしてる。

ってか、呼び捨てだ。

なんかいいな、呼び捨て。

距離がぐっと近い気がする。


俺と絢の間には、ちょっとした壁がある。

俺が最初から壁を作るみたいに苛めたのが原因なんだけど。

今思うと、結構後悔してて。

ライトな感じの苛めでも、

絢はすぐに怯えて距離を取ろうとする。


俺のこの性格がそうさせてるんだろうけど。

もっとぐいぐい来てくれても、全然構わないのに。

絢はいつだって躊躇して距離取って、少し様子を窺うんだよな。

それが、傷つくこともある。



BBQは珍しい食材も用意されていて

皆、終始テンション高い。


お酒が入った千穂さん夫婦は

庭のベンチでラブラブし出したこともあって

俺と絢は夜のビーチに散歩に出ることにした。

ユウとユウの彼女はルームシアターで映画を観るらしい。


「絢、行くぞ」

「は~い」


傷みそうな食材を冷蔵庫に入れ終わった絢を呼ぶ。

夜のプライベートビーチはロマンティックというのだろうか。

水面に浮かぶ月が幻想的。

ロングチェアに腰掛けて星空を満喫する。

都会じゃ拝めない満天の星空。

雲が少ないこともあって、無数の星に魅了される。


「慧くん、凄い星空だよっ!」

「ん」

「贅沢すぎるねぇ~」

「そうだな」


星空を見上げる絢。

俺はそんな彼女を見つめていた。

彼女が試験勉強を頑張ったから、この景色を拝めたわけだし。

じゃなかったら、今頃いつもと変わらぬ日々を過ごしてたはずだから。


「明日、水着着れそう?」

「え?」

「明日、ユウ達が海に入ろうって」

「うん、平気だよ?」

「痛みは?」

「大丈夫」


俺に気を遣ってるのか、分からないけど

ニコッと愛らしい笑顔で返事してくれた。



「ゆずぅぅぅぅ~~っ」

「大丈夫だってッ!!」

「でもっ……」


朝食を食べ終えた私達は、身支度を済ませてビーチに集合らしい。

千穂さん夫婦はクルージングに出かけた。


ゆずと色違いの水着を着たのはいいけど

どうしても部屋から出る勇気が出ない。


フリル使いのビスチェタイプで

ゆずは黒、私は白のトップス。

肩紐のところにもフリルがあしらわれてて

ポイントでパールが散りばめられている。

ギンガムチェックのスカートタイプで

ビキニなんだけど、普段着に見える感じで

ガーリーだけどトレンド感のある水着。

ゆず一番の推しは、背中のレースアップ。

ユウくんを瞬殺したいらしく、これに決まった。

前から見たら露出度は少な目だけど

後ろに回ったら、絶対慧くん引くと思う……。


「プライベートビーチなんだから、いいじゃん。他の人に見せるわけじゃないしさ」

「それはそうなんだけど……」


そもそもビキニなんて、着ようとも思わなかったのに。

ゆず仕様の水着はハードルが高すぎる……。


「ほら、メンズ待たしちゃ可哀そうだから、行こっ」

「う゛ぅっ……」



ゆずに手を引かれ、無理やりビーチに連れ出された。


ゆずが可愛く、緩めのアップに髪をセットしてくれた。

もちろん、メイクも。

だけど、肝心の水着が……。


「お待たせ~♪」

「おぉぉっ!2人ともめっちゃ可愛いじゃん!凄く似合ってるよ」


ユウくんはとっても褒め上手。

いつも優しい声音で褒めてくれる。

ゆずは私の腕に腕を絡ませ、嬉しそうに燥いでる。


視線を彼女から無言のお方へ移した、その時。

バチっと視線が絡まった。

ッ!!///////

めっちゃ見られてるんですけど。

しかも、無言で。

怖いこわいコワイって……。


「ほらっ、慧も何か言えよ~っ」

「んっ…」


ユウくんに背中を押され、慧くんが私のすぐ目の前に来た。


「じゃあ、うちらは海に行って来るね~♪」

「えっ、ちょっと、ゆず~っ!」


手のひらをヒラヒラさせて、ユウくんと海に行ってしまった。

もう少し一緒にいてくれてもいいのに……。


恐る恐る視線を彼に向けると、

えっ……?!

慧くん、ちょっと挙動不審。

なんだか、新鮮な彼を見てしまった。



「慧……くん?」

「っっっ/////……それ、反則だろ」

「え?」

「似合いすぎっ。ってか、めっちゃ可愛いっ/////」

「っ//////」


慧くんが照れてる。

こっちまで照れちゃうじゃない//////

口元を手で覆って、視線を逸らすみたいに横を向いた。


「慧くんも、めちゃくちゃカッコいい!」


黒のサーフパンツで、片方にだけ白いラインが2本入ってる。

ユウくんは色違いで紺色。

脚が長いし、腹筋割れてるし、

目のやり場に困るんだけど……。


「ん、俺らも行こっか」

「……うん/////」


差し出された左手。

その大きな手をぎゅっと掴む。


普段まじまじと肌を見てないから

こんな近くで、太陽の下で見るとドキドキしちゃう。

先を歩く彼の背中をまじまじと見ていると、

背中の腰に近い部分にほくろを発見。


「こんなところにほくろがあった♪」

「は?……ってか、今頃?」

「え?」

「あ、いや、……何度も裸見せてんじゃん」

「っ//////」


そういうことはお口チャックでお願いします/////



日差しが強くて、肌がジリジリと焼ける感じだけど

海の中は冷たくて気持ちいい。

泳ぐのは苦手じゃないけど、

流されたら怖いから、

ついつい慧くんの傍から離れられない。


ゆずはバナナボートに乗って

ユウくんがゆずにちょっかい出してる。

いつ見てもラブラブな2人。


うちらは大きめな浮き輪にそれぞれ乗って、

手を繋いて浮いてるだけ。

サングラスしてるけど、変な焼け方しないかな……。


「なぁ、絢」

「ん」

「それ、パット使ってんの?」

「へ?」


流れる雲を見ていたら、

突然、慧くんが核心を突いて来た。


「どう……思う?」

「ん~、分かんねぇ。入ってても薄めのタイプかな?とは思うけど」


私が『痛みがある』と伝えて以来、

彼は胸を触ろうとしなくなった。

というか、ハグも我慢してるっぽい。

キスは相変わらずして来るけど、

それ以上はしないで我慢してるみたい。


繋いでる手をぎゅっと握って、引き寄せた。

お互いの浮き輪がポンとぶつかり、

自然と視線が絡まって―――彼の耳にそっと呟いた。


「Cカップになったの//////」

「はっ、マジで?!」

「うん//////」



「ちょっと、見せてみ」

「え、やだよ/////」

「何でだよっ」

「ゆず達いるじゃん」

「見てねぇよ」

「そういう問題じゃないからっ」

「いいじゃん、ちょっとくらい」

「ダメだってっ」

「じゃあ、触らせて」

「何でハードル上げんの?!/////」


意味わかんないっ。

近くでチラッと見るだけでも恥ずかしいのに。

ゆず達が近くにいるのに、触るとか……無理むり。


顔をブンブンと大きく横に振り、

『いや』を態度で示した、次の瞬間。

彼は浮き輪から下りて、

片方の手で浮き輪を掴み、私の横に立った。


「これならユウ達に見えないから」

「っっっ//////」


そこまでする?

壁になるように立ちはだかって凄い妖艶な視線を浴びせて来る。


「ここ最近、我慢してやったんだからいいだろ」

「っっっっっ//////」


分かってるよ、我慢してくれてたこと。

だけど……。

羞恥で視線を泳がせていると、

彼は強引に手を伸ばして来た――――。


「おぉっ、マジで本物だ」


パットが無いのを確かめた彼は……。



「まだまだデカくなりそうだな」

「ッ?!/////」


嬉しいような、気恥しいような。

それに、ちょっと視線が怖いんですけど。

口角が緩やかに持ち上がり、目元を細めて。


そりゃあ、もう少し大きくなってくれたら嬉しいけど。

ブラを買い替えるのが大変なんだよね。

ついこの間、サイズアップしたけど。

なんかこの調子だと、また買い替えないとならなそう。


「何、その不服そうな顔」

「え、あっ、……ううん、何でもない」

「言いたい事があるならハッキリ言えよ」

「う゛っ……」


彼の威圧感はハンパない。

言いたくないことも言わされる。

それも、無条件で。

まぁ、この性格を差し引いても

彼はお釣りが出るくらいカッコいい。


「下着のね、サイズがすぐ変わるから、買い替えが大変なのっ」

「あ、……そうだよな」

「……ん」

「んじゃあ、俺が買ってやろうか?」

「へ?………ッ?!//////」


溜息交じりにボソッと呟いたら、

目の前にどアップの美顔が現れた。

しかも、もの凄~~く、あくどい顔してる。