ブラック王子に狙われて②



2年に進級した俺と絢。


始業式の翌日。


絢を自宅へ送り届けて、玄関先で。



「絢、これからは毎日一緒に帰れない」

「えっ?」

「俺、特進クラスだから1時間多く授業がある日が…」

「……週何回?」

「3回」

「何曜日?」

「月水金」

「そっかぁ…」

「悪い」

「慧くんのせいじゃないよ」

「帰れる日は一緒に帰るから」

「うん」

「ごめんな」

「ううん」



少し寂しそうな顔をした絢。

出来る事なら俺だって一緒に帰りたい。

けれど、こればかりは……。



絢をギュッと抱きしめ、おでこにキスを。



「じゃあ、また明日な?」

「うん、気をつけて」

「あぁ」



俺は絢の自宅を後にした。




翌朝―――――


俺はいつもより早く家を出て


―――――ピンポーンッ


「はい」

「おはようございます、神宮寺です」

「あら、慧くんおはよう。ちょっと待ってね?」


インターホンに絢の母親が。

すると、間もなく玄関から…。


「どうしたの?こんな早くに…」

「科が違うので、これからは一緒に帰れない日も…。せめて朝だけでもと思って」

「あら、そうなの。絢は幸せ者ね。慧くんみたいな素敵な彼氏が迎えに来てくれるなんて」



にこやかに微笑む絢の母親。

絢が美人なのは母親譲り。

小母さんはまだまだ20代に見えそうな美人。

2人で歩いていたら絶対姉妹だって思われそう。



「俺が絢にベタ惚れなんで、仕方ないですよ。あっ、でもこれは絢には内緒ですからね?」

「はいはい。フフッ、上がって待ってて」

「はい」



絢の母親の後を追って、家の中へ。




絢がダイニングで朝食を取っていた。



「慧くんは食べて来たの?」

「あっ、はい。済んでます」



俺は絢の隣りに座って。



「そんなに急いで食うと詰るぞ?」

「……ん……うっ…」

「ほら、言ってるそばから…」

「やだ、絢ったら。慧くんの前で吐き出さないでよ?はい、慧くんはお茶でも飲んでて?」



目の前に紅茶が置かれ



「絢、ママ洗濯してくるから」

「んー」



絢の父親はもう出勤したんだろうか?

姿が見えないけど…。



「絢、小父さんもう仕事行ったのか?」

「んー」


絢は必死にサラダと格闘している。

小さな口でモグモグと……。



いつ見ても見飽きねぇ。

何でコイツはこんなに可愛いんだ?





俺は身体を絢の方に向け、

じーっと眺めていると…



「慧くん」

「ん?」

「そ、そんなにじっと見られると食べ辛い」

「フッ、俺様がよそ見もせず、見てやってんだ。有難く思え」

「なっ!!ッん?!」



俺は絢が口を開けた隙に

彼女の好きなミニトマトを放り込んだ。



「旨いか?」

「……ん~」

「そうか、良かったな?」

「ッ!!////////」



絢はミニトマトと同じくらい頬を赤らめ、



「赤くなってんぞ?」

「けっ、慧くんのせいだから////」

「はっ?……俺?」

「もう、朝からその笑顔は眩しすぎるって////」

「フッ、見惚れたか?」

「もう!!////」



照れてプクッと膨れるコイツが

俺の男心を刺激する。




付き合い始めて半年。

最近、漸く会話も弾むようになって来た。


まぁ、俺が苛め過ぎなきゃいいワケだけど

コイツを見てるとつい苛めたくなる。


だって、反応が可愛すぎるんだよ!

見てると、マジでもっと苛めたくなる。



最近は、夜遅くまで勉強を教えてやると

絢の母親が車で送ってくれたり。

デートの日には俺の家で夕食を取り、

俺の母親が絢を自宅へ送り届ける。


それがきっかけで、

双方の母親が仲良くなり、

今では気兼ねなく双方の家を行き来している。



「慧くん、ちょっと待ってて。着替えて荷物取って来るから」

「手伝ってやるぞ?」

「へ?……い、いえ、大丈夫です////」

「プッ……早く行って来い」

「はい////」



絢は慌てて2階へ。

入れ替わるように小母さんが戻って来た。




「ねぇ、慧くん。絢と一緒に帰らない曜日って?」

「あっ、はい。月水金です」

「週3日ね?」

「はい。それが何か?」

「えっ?……えぇ、ちょっとね…」



少し曇り顔の絢の母親。

1人で帰らせるのはやっぱりマズいか?

1時間ちょっとだし、学校で待たせるか?


俺がそんな事を考えていたら



「慧くん、お待たせ。行こう?」

「あっ、んー。小母さん、ご馳走様でした」

「どう致しまして~2人とも気をつけてね?」

「「はーい」」



俺らはいつものように手を繋いで学校へ。





それから2日後の放課後。

木曜日の今日は一緒に帰れる日。


俺は絢が迎えに来るのを教室で待っていた。

けれど、20分しても来る気配が無く。

痺れを切らして、絢の教室へ。



『2C』と書かれた教室のドアを開けると

教室内には数人の生徒が。


その中に――――



俺の視界に絢と見知らぬ男が1人。


しかも、絢の両手を握りしめ、

何だか熱弁している様子。


俺の女に気安く触んなって!!

俺はイラッと来て……


「おいっ、絢!!」


俺は少し声を張って絢を呼ぶと、

俺の声に反応して絢の手を離した男。


その男は振り返り、俺を見据えて



「あっ、神宮寺くんだよねぇ?初めまして。俺、佐伯保尚(やすひさ)、絢の幼馴染」

「へ?……幼馴染って?」

「絢から聞いてないの?この春に戻って来て、この高校に編入したんだよねぇ」



何だか挑発するような視線を向けて来る。

ってか、『絢』って人の女を呼び捨てにすんな!!


絢に視線を移すと気まずそうな表情。

俺は冷静を装って……



「へぇ~そうなんだ。……絢、帰るぞ?」

「あっ、うん」


絢は鞄を手にして、


「やっくん、またね」


佐伯に軽く手を振り、俺のもとへ。


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