それから5日後。
≪話がある≫
そう言ってシロさんは、私を病院の中の、ちょっとした休憩の広場に呼び寄せた。
何のことだろう、と気楽に構えていたが、彼の姿を見ると、そんな気楽な思考はどこかに消え失せた。
自分の目を、疑った。
「…わざわざ、ごめん」
謝るシロさんに、私は何も言えなかった。
彼の白目の部分が黄色に染まり、少し着崩した着物から見える肌は黄色く、前よりはるかに細くなった腕には点滴が。
こういう人には見覚えがある。
絶句した。
――うそだ
「…なんで、シロさんが……」
言葉が上手く言えない。
「俺を見ただけで分かるの?」
自嘲するように言うシロさんの顔を、私は見れなかった。
視界が、歪んでいく。
――なんで?
私は彼が乱酒したことなんて見たことない。
涙が目から零れていく。
「…なんで……シロさんが…」
やっと見れた彼の表情が、亡くなった母がよくする表情と被る。
肝機能がよくない状態にある時、白目の部分が黄色くなると、あのとき学んだ。
本当に、どうして貴方が?
「お酒、そんなに飲んでないじゃないですか」
「そうだね」
「じゃぁ何故?」
「……さぁ…」
シロさんは答えを知っているようだった。
そしてこの先も。
――なんで?
なんでシロさんまで病気になるの?
なんで。
「なんでなの…」