これから俊さんに会うというのに、他人に分かるほどひどい表情をしていたのだろうか。 私は読んでいた本にしおりを挟み、鞄から鏡を取り出すと、頬にチークを重ねていく。 佳代ちゃんは心配そうに、しかしそれ以上は何を言うでもなく、奥へ戻っていった。 私は鏡を鞄に戻すと、再び先ほどの本を開く。内容なんて頭には入ってこない。 ただ、俊さんが来るまでの、ほんの30分程度の時間を持て余しているのが、嫌なだけだ。