夏の夕陽はまだまだ出てくれなくて、空には眩しさを帯びた薄い水色が広がっていた。

小学生やおばさん達は楽しそうに話をしながら、それぞれの目的地に向かっている。昇ちゃんは挨拶なんかする様子もなく、いつものアパートに入っていった。

結局昇ちゃんの意向を変える事は出来ず、あたしは昇ちゃんのアパートまでついてきてしまった。

でも、それもいつもの事。

昇ちゃんは「何で来んの?」とか、文句も何にも言わない。
多分、面倒臭いんだろう。

あたしは怠そうな足音を追いかけて、階段を上った。
ずっと後ろにひっついていても、彼女には見えないだろうな。昔、そういうテレビゲームがあったような気がする。まさに、あの状態。


階段が終わって、あたしは昇ちゃんの斜め後ろに移動した。ほんの少しだけ、横顔が見える位置。

昇ちゃんは自分の部屋のドアを見つけ、制服ズボンのポケットから、素早く鍵を取り出した。

よく見ると昇ちゃんは、筆箱と携帯がようやく入るくらいの小さいポシェットしか持っていない。もちろん、勉強道具なんて持ってる訳がない。

やる気ないなぁ、なんて笑いそうになりながら、あたしは昇ちゃんが開けてくれたドアの中に入った。