「はぁ……」

昇ちゃんが小さく溜め息を吐く。目敏いあたしは、それを見逃す事が出来なくて。余計、泣きそうになる。


「何の、溜め息なの?」

声が震える。でも、あたしはそれどころじゃなくて、涙を我慢するのに必死だった。


昇ちゃんは気怠そうにあたしを見た。

「何でそんな事、聞く訳?」



何、ソレ。
今まで付き合って、1番長い台詞がソレ?

せっかくのあたしの我慢は、どうなるんだよ。今ので、涙、溢れて来たじゃないか。


嗚咽を我慢した、気持ち悪い声が絞り出される。

「……昨日、見たの。昇ちゃんがビンタされてるところ」

昇ちゃんは、また、目を逸らす。


ねぇ、何でそんな態度取るの?

何で、目を合わせてくれないの?