さっきまで乾いていたはずの汗も、再びじわりと溢れてくる。さっきまで、あんなにも涼しかったのに。

ビーチサンダルじゃない足音が、夜道に響く。昇ちゃんがスニーカーを履いているところを、初めて見た。というか、制服以外の服を着ているのを、初めて見た。あの時の、スーツ姿以外で。

正直、こんな状況でも、かっこいいと思ってしまう。


昇ちゃんはいつもの眠そうな目であたしを見て、階段の方を見つめた。

それから、あたしの前で足を止めた。
止めて、くれた。

「入る?」


……何で優しいんだよ、馬鹿。泣きたくなるじゃないか。

泣きそうになるのを抑え、首を横に振る。


まだ安心しちゃいけない。


本当の事を聞きたい。