大きい溜め息が零れていった。呆れた、とかそんなんじゃなくて、無性に空しくなって。

差し出された財布を受け取らずに、昇ちゃんをじっと見つめる。

「……そういう事じゃなくて!」

……あたしは、昇ちゃんと一緒に行きたいんだよ?


昇ちゃんは気怠そうにチッと小さく舌打ちすると、テレビを消した。

「早く、しろ」

「やったぁ!」

嬉しくて、思わず小さくガッツポーズをしてしまった。訳すと、「仕方無くついていってやるから、早く済ませろよ」という事だと思う。多分、あたしにしつこく言われるのが面倒臭かったのだろう。

昇ちゃんの基準はいつだって、どちらが面倒臭いか否か、なんだから。


それでもあたしは嬉しくて、怠そうに再びビーチサンダルを履く昇ちゃんを、跳ねるように追いかけた。

昇ちゃんは、あたしが外に出ると、きちんとドアに鍵をかけ、鍵ごとポケットに手を突っ込んだ。やる気のない足音を立てながら、夕陽に赤黒く染められた影が、1段1段、階段を下りて行く。

タンクトップに、腰までずらした制服ズボン、その上、ビーチサンダル。

全くやる気のない格好。


それでも、やっぱり一緒に来てくれる事が嬉しくて、自然と足取りが軽くなってしまう。