「……ん」


眩しい。ゆっくり目を開ける。


「どこだ?ここ……」


ぼーっとする頭。ダルい。きしむ体を何とか動かして周りを見渡す。


淡いピンクのベッドカバー。ベージュの絨毯。木目調の勉強机。本棚には難しい本がズラリ。それになんだか優しい香り。


少なくても自分の部屋でない事は間違いなさそうだ。俺の部屋黒ベースだし……



-ガチャッ-


「あ、お目覚めですか?」
「あ………」



でかい分厚い眼鏡。白いTシャツに黒いスウェット。……アイツだった。
っつうか!白→グレー→黒ってどうなの!?何かの法則!?



「昨日はびっくりしました。帰ってきたら玄関前に倒れてらして。熱高いし、脱水起きかけてたし…よっぽど救急車呼ぼうかと。あ、まだ起きないでください。熱あるんで」
「ここ…優の部屋?」


手に持っていたお粥と薬が乗ったお盆をベッド脇に置く。相変わらず無表情で。



あの後の事は余り覚えて無い。どの位そこに居たのか、いつコイツが帰って来たのか分かんないけど。「常磐さん?常磐さん!?」と俺を呼ぶ声と。自分より大きくて重い俺を必死に支えながら運んでくれた事と。何度も汗拭いたり、水分くれたり、冷やしてくれたりしたのは覚える―………。



「距離的にうちの方が近かったもので。あ、お粥食べれますか?」
「………食いたくねぇ」



茶碗を差し出す手がピタッと止まる。普段の俺なら女の子には絶対こんな口の聞き方しないんだけど……ダメだ。素が出る。



「…………またからかってるんですか?昨晩から困らせるような事、いちいち言わないでください。どうぞ」
「あ?俺なんか言ったっけ?」



全然覚えて無い。



「覚えて無いって事はやっぱりからかってたんじゃないですか。はい、早く食べてください」



茶碗を渡されたけど、手に力が入らない。まだ利き手についたギプスが邪魔してる。危なく茶碗ぶちまけるとこだった。



「貸してください」



茶碗を取り上げると、お粥をすくってサジを向けてくれる。素直に口をつける。