アキはハルの顔を見る。



アキの目には心配そうな顔をする優しい姉が映った。


そんなハルを見た瞬間、アキは涙が溢れてきた。



「…実はね、あっちに行きたい理由は仕事じゃないんだ」

「えっ?」



アキは誰にも話していなかった想いを話し出した。




「去年の夏休みに1人でイギリス行ったでしょ?その帰り道に、ある男の人と出会ったの」


ハルはアキの頭を撫でながら話を聞く。




「変な男達に絡まれたのを助けてくれて、日本語を優しく話す人でね…空港まで送ってくれたんだけど、手続きしてる間にいなくなってて…」



アキはギュッと目を瞑った。




「…名前聞かなかったし、あの人にとってはただ一瞬の出来事かもしれない。すぐ忘れてしまった事かもしれない。でも、あたしにとっては……」


アキはそれ以上話せず涙を流した。


ハルはそんなアキを抱きしめた。