卒業までの間、学校は就職先の研修などがある為休みに入っていたのでアキはバイトをしていた。


少しばかり憧れていたアパレルの『ショップ店員』のバイト。



でも現実と憧れは違った。



売り上げのノルマ、どんなに辛くてもしなくてはならない愛想笑い。


唯一嬉しい事は、好きな服を色々着れる事。




「保育士もこんな感じなのかな。想像してるよりも辛くて疲れるのかな…」



アキはそんな事を想いながら、仕事をしていた。




この世界は夢見がちな自分が考えてるほど甘くはない。


両親に守られ、そばにいる姉弟。笑いあえる友達。



沢山の人に支えられてきたアキは、自分の見てる世界の視野が狭かった事に気付いた。




「ねぇ桜井さん」



ぼんやりしているアキに店長が話し掛ける。




「はい、何ですか?」

「桜井さんは、好きな芸能人とかいる?」

「芸能人ですか…?」

「うん。私、外国人とかハリウッドスターの方が好きなんだよね」



店長は何やら雑誌を見ながら話す。




「そうですね、あたしは芸能人とかあまり興味がないです」

「桜井さんは現実的なのね」

「どっちかって言うと夢見がちな方なんですけど」



そんなアキを見て、店長は手招きする。




「この子カッコ良くない?」



店長が雑誌の指差す場所を見ると小さな一面の


“注目の俳優のたまご”


という見出しに、ある男が載っていた。




「……!!この人…」



そこに載っていた男は、イギリスでアキを助けたあの男にそっくりだった。



「えっ!?俳優だったの!?でも俳優さんがあんな所うろついてたりしないよね。…似てるだけかな?」



アキはまじまじとその一面を見た。