風と走ると風が見える。


うるさい喧騒の中にいても風の声しか聞こえない。




アシュリーは買ったばかりのバイクに乗って家路を急いだ。



「たでーま」

「おかえり、アシュリー。本当にバイク買ってきたの?」

「ああ、見てみるか?」



アシュリーは玄関に出迎えてくれたアキと共に外に出た。



車庫にある車の横に、新品の黒いバイクが置いてあった。




「あたしはバイクは反対だったんだけどなぁ。車にすればよかったのに」


「車置く場所がねぇだろ。だからだよ。そんな遠出するわけじゃねぇし」


「でもバイクは危ないよ…」



アキはバイクを触りながら呟く。


そんなアキを見てアシュリーはヘルメットを手に取った。



「危なくねぇよ。乗ってみるか?」

「えっ!恐いよっ」

「俺は安全運転だから安心しろ。お前を乗せるんなら尚更だ」