初めはゆらゆら運転していたラヴだが、すぐに普通に漕げるようになった。



アキは目の前にある大きなラヴの背中を見つめながら、柔らかな風とラヴの匂いを感じていた。




2人を乗せた自転車は街を抜け、田んぼ道を走る。



「…ねぇラヴ、どこ行くの?」

「内緒です」

「えー!教えてよ」

「アキ、あまり揺すると危ないですよ」



アキはバタバタと足を振っていた。


その振動でラヴはハンドルを取られ、2人を乗せた自転車は草むらに倒れた。




草むらには自転車のタイヤがカラカラと回る音が響く。



「いたた…。ラヴ、大丈夫?」



アキは起き上がると隣に倒れているラヴを見る。

しかしラヴは動かない。




「ラヴ?…ラヴ!ラヴ!!」



アキはラヴを揺するが、ラヴはピクリとも動かないまま。




「やだ…ラヴ死んじゃやだ!…ラヴ死んじゃったら…養育費や食費はどうするの!?ラヴのお葬式代やお墓のお金も掛かるし家計が…」



どうでもいい心配を嘆くアキの腕をラヴは自分に引き寄せ、キスをした。




草花を揺らしながらそよそよと風が吹き抜ける。