私は始めて“愛しい”という気持ちを知った。



レディを空港まで送った帰り道、私は少し後悔した。



「名前くらい聞いておくべきだったでしょうか…」



でももう二度と会えないかもしれない人に名前を聞く必要もないか。




そんな事を思っていた私だが、柄にもなく頻繁に外出するようになり、あの路地には毎日寄るようにしていた。


なんで自分がこんな事をしているのかわからない。




でも

あのレディに会いたくて仕方なかった。







世界は広い。

色は一面漆黒の闇なのに、果てしなく広い。



私は独りだ。独りでいい。

何も望んだりしない。





そう思って生きてきたのに…。