「どうしたんですか?」



あたしが泣いてると、1人の男の子が駆け寄ってきた。



黒髪に灰色の瞳。


綺麗な発音の英語を話すその子は、あたしとさほど年齢が変わらない施設の子なんだと、あたしは暗黙の了解をした。




「あたし…英語わからない」



そう呟くとその男の子は、淡々と日本語を話し始めた。




「日本人ですか。見ない顔ですが、あなたもここの子ですか?」



あたしが首を振ると男の子はあたしの頭を撫でた。




「…悲しい事は長くは続かないです。私はそう信じてます。だから大丈夫ですよ」



その子の言葉はまるで魔法みたいで、根拠なんかないのに本当にそうなんだと思えてしまえる程だった。



この子はあたしよりも、きっとずっとずっと悲しい想いをしてるんだ。


そう思った。





「アキ!」



暫く男の子と見つめ合っていると、お母さんの呼ぶ声が聞こえ、あたしは男の子を気にする事なくお母さんの元へ走った。




その男の子が運命の相手だとも気付かないまま。