その時サミュエルは、自分が本当に不幸だと思った。



アキから生まれてくる子どもが狡いと、自分が望んだ幸せを手にする子どもが狡いと思った。



そんなサミュエルの気持ちに気付くはずのないアキは、サミュエルを膝に乗せ絵本を読み始めた。




「アキさんは…僕のお母さんですか?」

「え?」



サミュエルは女の職員にそう聞く癖があると、母から聞いていたアキ。


母からは可哀相だけど肯定はしてはいけないとも言われていた。




「…違うよ?でもサミュエルのお母さんになれたら嬉しいな」

「そう言ってくれたのはアキさんだけです。僕もそうなって欲しいです。」



他の職員には否定しかされなかったサミュエルは、アキの言葉が嬉しくて涙を流した。


そんなサミュエルの頭をアキは優しく優しく撫で続けた。






この日1日で孤児の心境を痛い程知ったアキ。


それと同じくらいラヴの心の中も知れた気がしてアキは複雑な気持ちになっていた。




普通に幸せな生活を送ってきたアキには

彼らを全て理解し、受け入れる為に何をすればいいのかわからなかった。