施設に戻るとアキは1人ベンチに座り、空を見上げていた。


昼間の曇り空が嘘のように、一面に星が瞬いている。




「こんな所で何してんだよ」

「アシュリー」



アキの元へやってきたアシュリーはアキの横に座る。




「今日はその…サンキューな。嬉しかった」



アシュリーが頭を掻きながらそう言うと、アキは笑う。




「いいえ。子どもの幸せを願うのは親として当たり前だからね」



2人は煌めく星空を眺めた。




「アシュリー、この場所を覚えてる?」

「ん?…アキがラヴと喧嘩した時の事か?覚えてるよ」

「あの時はまだ、隣に座ってたアシュリーはあたしより小さかったのにね。今じゃこんなに大きくなって」



アキはアシュリーを見つめる。




「子どもの成長は早いって本当だよね。変わっていくんだなぁ…みんな…」


「まぁ変わったのは体だけだけどな。あの頃から泣き虫なアキを守ってやろうって決めてたし。それは今も変わらねぇよ」


「ありがとう、アシュリー」


「…今となっちゃもう、それも潮時だけどな」



アキは返す言葉が見つからなかった。



親から離れていく子どもを引き留め権利などないから。





アキとアシュリーはそれ以上話さず、夜空を見上げていた。


宝石のように輝く星達が離れていく親子を見つめているようだった。




そんな2人の姿をアキの母は窓から見ていた。