園庭に出ると、ラヴと喧嘩した時に座っていたベンチを見つけた。



白かったベンチはあの頃に比べて汚れてしまっている。

アキはそれが悲しかった。




アキはそのベンチに座り、空を見上げる。


庭には風の音だけが響き渡っていた。




あの頃は、小さいアシュリーがラヴと仲直りするきっかけを作ってくれた。


アキはただラヴを愛していれば幸せだったあの頃に戻りたいと思った。




「…何が変わっちゃったんだろう…あたしの全てはラヴだったのに」



アキの嘆きは風に吹かれて消えた。




気付かない内に、アキの足はラヴの自室だった部屋に向かっていた。



ドアを開けると、その部屋は他の誰かの部屋になっていた。


あの時のラヴの部屋とは全く違う景色。





ラヴが初めて『I love you』と言ってくれた部屋はもうなかった。





時は過去を消して未来へ向かう。


時は思い出を刻まない。

刻むのは自分自身の中だけ。




もうラヴが何処にもいないと思ったアキはその場にしゃがみ込むと、声を押し殺して泣いた。



「変わったのはあたしだ。…あたしが変わっちゃったんだ」



ラヴも子ども達も

世界も時間も思い出も



何も変わってなんかない。




あたしが変わっただけなんだ…