「では、ホワイトガーデンに帰りましょうか」



男は立ち上がるとホワイトガーデンに向かって歩き出す。

そんな男をアキは呼び止めた。



「あのっ…カフェにでも行きませんか?」


「…カフェですか」


「はい。助けてもらったお礼に奢ります。…それにあたし、あなたの事色々知りたいんです」


「…日本の女性は大胆ですね。私の中の大和撫子のイメージとは全く違います。はい、構いません。行きましょうか」



アキの発言に顔を赤く染めた男はアキの少し前を歩く。

アキはそんな男の仕草を可愛く思った。




2人は人気がもうあまりなくなったカフェへと入った。



「そういえば、まだ名前を聞いていませんでしたね」

「…ああ、私はラヴと言います。そう呼んで下さい」

「…ラヴ!?ラヴ=エンドロールですか?」



アキは目をまん丸にして問う。



「はい。よくご存知ですね」

「日本の雑誌に載ってたんです!ラヴさんは俳優さんなんですよね」

「俳優といってもまだ新人です。それと、ラヴでいいです」



ラヴは、運ばれてきた紅茶を砂糖も何も入れずに飲んだ。



「ラヴ…は、紅茶にお砂糖入れないんですか?苦くない?」



アキはコーヒーにミルクと砂糖をたっぷり入れる。



「はい。甘いものは苦手なんです。それに紅茶は香を楽しむものですから」


ラヴはズズッと紅茶を啜る。




「そういえばラヴは何で俳優になろうと思ったの?」

「……」



アキの質問にラヴは答えなかった。


ただ、何となく寂しい表情をしたラヴ。

アキは彼がふとするこの表情が気になっていた。



「…そういえば、レディの名前は何ですか?」


「えっ!?…あぁ、あたしはアキです。桜井アキ。アキって呼んで下さい」


「はい。わかりました。宜しくお願いしますね、アキさん」


「あたしも呼び捨てで構いません」


「………はい」



ラヴは照れたのか、熱い紅茶を一気に飲み干した。