アシンメトリーの黒髪に白い肌と高い背。

優しく揺れるグレーの瞳。



後ろに立っていたのは紛れもなくあの男だった。



「やっと…会えた」


アキは口に両手をあてて呟く。




「…はい、やっとまた会えましたね。レディ」



その男はアキに手をさしのべる。



「怪我はありませんか?」



優しい目で見つめる男にアキは抱きついた。




「……恐かっ…たぁぁ」



いきなり抱きつかれた男は一瞬動揺したが、顔を赤くしながら優しくアキの頭を撫でた。




「よく絡まれてしまいますね。レディ1人で夜道を歩くのは危ないです」

「あなたに会いたかったんです。だから…またここに…」



アキの言葉に驚いた男は、きょろきょろと辺りを見渡した。



「…今日もこれから日本に帰るのですか?送りますよ」



恥ずかしさを隠すためか、男は話題を変える。




「いえ、あたし今日からイギリスに住むんです」


「そうなんですか。ここから近い所ですか?」


「ホワイトガーデンという施設なんですが、そこの経営者が親族なのであたしも職員として働くんです」


「…ホワイトガーデン…ですか。奇遇ですね、そこに私も住んでます」


「へぇ〜……って、えぇぇぇ!?」


「私は職員ではありませんよ。孤児として生まれてからずっとお世話になってるんです」




そう言った時の男の顔が、寂しそうだった事にアキは気付いた。