「何が気掛かりなの?」

「え?」

「社長との結婚。迷う理由は何?」

「・・・・・・」


理由は、いろいろある。

社長と自分は釣り合わない、とか。

一度断ったのに、とか。


理人は、子供のために利用しろと言ったが、やはり考えてしまう。

好きでもない相手―――自分との結婚を、理人は望んでいないのに、と。


「・・・・・・お腹空かない?」

「え? あぁ、うん」

「よくよく考えたら、あんた病人じゃない。ご飯作ってあげる」


彩子は上着を脱いで、いそいそと腕まくりをする。


「悩むのは後にしましょ。まずはご飯!」


冷蔵庫を開けて、彩子は入っているものを物色しだす。

真緒は苦笑いを浮かべながら、彩子の好意に甘えることにした。


(・・・・・・結婚、か)


少なくとも、今回は理人の意志を感じるプロポーズではあった。

プロポーズと称して良いものか、判断に困るが。