真緒は視線を合わすことなく、頷く。

産むという答えは、最早変わることはない。


「・・・・・・仕事、続けるの?」

「・・・・・・辞めると思う」

「そっか」


重苦しい空気に、息が詰まりそう。


「社長に結婚を申し込まれた、って言ったよね? 受けるの?」

「正直、迷ってるの。・・・・・・彩子なら、どうする?」


真緒の問い掛けに、彩子は苦笑してみせる。


「私なら、まず産まない」

「そうなの?」

「うん。だから、社長に結婚を申し込まれても、断る」


真緒の産むという決断も、彩子の産まないという決断も、間違いじゃない。

産むのも勇気なら、産まないのも勇気だと思う。


「客観的な意見になるけど。社長と結婚するのが、1番良いと思う。父親だし、お金あるし・・・・・・カッコイイし」


最後の一言は、真緒の緊張を和らげようとしてくれたのだろう。

真緒は笑うが、すぐに表情は曇ってしまった。