予想もしない人物の登場に、緊張さえも吹き飛んだ。
「やっぱり制服のままだったのね。ほら、着替え持って来たから」
「あ、ありがとう。でも、なんで・・・・・・?」
後からやって来た一臣は、理人と話している。
彼が彩子を連れて来たのだろうか?
「その話は後で。早く着替えて、帰ろ」
「う、うん」
押し込まれる形で、真緒再び寝室へと戻った。
「帰りも頼む」
「わかりました。社長は会社へ?」
「あぁ」
「では、車を―――」
理人と一臣を、彩子は盗み見る。
状況は未だに掴めない。
真緒が何故、社長の自宅にいるのか気になって仕方ないが、今は後回しだ。
「お待たせ、彩子」
「じゃ、帰りましょ」
リビングを出ていこうとするふたりに、理人が呼び止めるように声をかける。
「送らせる。工藤、頼む。会社は自分の車で行く」
理人は車のキーを取りに、書斎へと向かった。