この結婚に、気持ちはいらない。


「今すぐには、答えは出せません」

「あぁ、わかってる。―――工藤か?」


タイミング良く、理人の携帯が鳴り響く。


「は? あぁ、いや。・・・・・・お前の判断だ、責めはしない」

「?」


携帯を切った理人が、真緒を横目で見てため息をつく。


「迎えが来たようだ」

「迎え?」

「あぁ、君の。すぐに来る」


理人は苦笑して、寝室を出ていく。

真緒は理解できぬまま、とりあえずベッドを降りた。





リビングは広く開放的だが、家具はシックな雰囲気で大人の落ち着きがある。

余計なものなど何もないリビングは、一見すると生活感が薄いと思った。

良く見れば、テーブルに置かれた灰皿と煙草、ライター。

ソファーには数冊の雑誌と新聞。


「何ここ?! 広っ!」


静寂を破る声に、聞き覚えがある。


「彩子!」


驚きを隠さず、真緒は声を上げた。