その理由に気づけない程、真緒も鈍感ではない。

重苦しい沈黙。

それを破ったのは―――。


「会社は、どうするつもりなんだ?」

「え?」

「辞めるのか、それとも産休を取るのか」

「・・・・・・」


いつかは考えなくてはならない問題だ。

とは言え、産休を取った後、同じ会社で平然と仕事ができる自信はない。


「・・・・・・辞める、と思います」


理人の顔を見れなくて、真緒は俯いたまま。

計画性がない。

会社を辞めた後、次の就職先はどうすればいい?

父親がいなくても大丈夫。

ひとりでも大丈夫。

それは結局、やせ我慢でしかない。

そんな事実を突き付けられたようで、真緒の気持ちは沈んでいく。


「産休を取れば、会社には復帰できる」

「それは・・・・・・」


わかってる。

ひとりでも産むと決めたのなら、乗り越えなきゃいけない壁は多い。