本当に、突然すぎる。
彩子は動揺を隠せないまま、一臣を凝視した。
「どうして、あなたが真緒の荷物を?」
「諸事情がありまして」
「諸事情? 悪いけど、安心して渡せません」
詳しく何も聞いていないのに、要求だけ突き付けるのはフェアじゃない。
それに、友達の持ち物を勝手に他人に渡すなんて、非常識だ。
「信用できないと?」
「えぇ。荷物なら、私が仕事終わりに届けに行きます」
「・・・・・・香坂さんは、ご自宅にはいらっしゃいません」
一臣の言葉に、彩子は固まる。
てっきり、自宅に居るものと思って話していた。
「いないって・・・・・・。じゃあ、どこに?」
「それは―――」
答えるべきか、一臣は悩んだ。
彼女に、理人と真緒の関係を教えても良いのだろうか?
だが、誤魔化して荷物を受け取るのは難しい。
「わかりました。就業時間後に、エントランスで」
「?」