意地を張らないで、素直に受け入れてしまえば楽だろうに。
「そんな女じゃないな、お前は」
真面目な性格が邪魔をして、自分ひとりで抱え込んでしまう。
けれど、受け入れてもらわなくては。
理人はベッドから腰を上げ、静かに寝室から出ていった。
隣のデスクを横目で見て、彩子は怪訝な表情を何度も浮かべていた。
数時間前、何故か社長秘書から真緒は早退すると連絡が入った。
資料室から戻らず、いきなり早退したと聞いたときは驚いたが、何よりその連絡が社長秘書から届いたことが、更に驚きだ。
「金森」
「はい?」
男性社員に肩を叩かれ、彩子は振り返る。
「呼んでるぞ」
視線を追えば、そこには社長秘書―――一臣がいた。
「?」
何の用だろう。
疑問に思いながらも、彩子は一臣の元へ向かう。
「あの、何か?」
「突然で申し訳ないのですが、香坂さんの荷物を預けていただけますか?」