ご飯を作っていると、

いつの間にか帰っていた孝明が、

後ろから私を抱きしめた。

「ビックリした。

おかえりなさい」

私は手を止めて、

抱きしめた手をそっと握る。


「ただいま。

イイ匂い。今夜は何?」


「お隣の前田さん、

旦那さんが漁師でしょ?

新鮮な魚をたくさんいただいたの」


「美味そうだな。

先にご飯食べよ。手、洗ってくる」


「そんなにお腹すいたの?」


「そんなごちそう見せられたら、

一気にお腹の虫が泣きだした」

そう言って笑いながら、

洗面所に向かった孝明。

・・・

昼間の話しは、

まるでなかったような会話。

・・・

今は少しだけ、

忘れよう・・・