「啓太っ」

上着のポケットに突っ込まれたままの啓太の左手。

その手を強引に引っ張り出して、アリスカは握る。

そのまま繋がれた手を、また啓太の上着のポケットへ。

「…アリスカさん?」

「…寒いじゃん、手、繋ごうよ」

「……このくらいどうって事ないって言ってませんでした?」

「か、風が吹いたから寒くなったのっ」

「モスクワはもっと寒いって…」

「男の癖に小さい事言わないでよっ!手ぇ繋ぐの嫌なのっ?」

赤い顔をしてまくし立てるアリスカに。