言い放った誠一郎。

前髪に隠れたその瞳が、隙間から覗く。

瞳は濁っている。

憎悪や、悪党を兄に持つ事への怒りや不満、謂れのない事で虐げられた末の歪んだ感情、誠一郎個人ではどうにも出来ない己を取り巻く環境や自身の出生。

それらのない交ぜになったものが、彼の瞳の奥深くでドロドロと渦を巻く。

…この感情が、誠一郎に憑依した怪異を変貌させたのか。

本来からはかけ離れるほどの能力と姿を与えたのか。

人間の心とはそれほどまでに闇を抱えられるものなのか。

龍娘は戦慄する。