やがて巨人斬りの9割が飲み込まれた。

何とか引き戻そうとするメルだが、まるで太刀打ちできない。

それどころか。

「っ!」

暗黒物質は、巨人斬りに続いてメルまでも飲み込もうとする。

巨人斬りを放さなければ、彼女自身も禁書に食われてしまう。

魔物とて例外ではない。

魂食らい(ソウルイーター)である禁書は何でも食らう。

いまや銀の肉体は右半身だけでなく、その全身が黒いタトゥーに包まれていた。

禁書がその力の全てを開放しつつある証拠。

邪悪な魔術書が、メルさえも飲み込むその瞬間。

「きゃっ!」

銀はメルを蹴り飛ばし、寸前のところでそれを阻止した。

…まだ銀が禁書に完全に意識を奪われていない証拠。

「あ、危なかったな…メル…」

ギリギリの所で精神を保っているのか。

銀は全身汗まみれだった。