普通の人間でしかない筈のユーリーの戦いぶりに、大歓声が巻き起こる。

誰もが魔物であるメルの圧倒的勝利を予想したであろう。

だが蓋を開けてみれば、華麗とも言えるユーリーの攻撃で、メルは攻め手をいなされてしまっている。

「もう…酷いですユーリーお兄様…女の子に尻餅をつかせて恥をかかせるなんて…」

僅かに頬を赤らめて立ち上がるメル。

「女性に辱めを与えるのは趣味じゃないんだけどね…」

タオルを丁寧に折り畳み、ポケットに入れるユーリー。

「できれば棄権してくれると助かる。僕も君とは些か戦い辛い」

「あら…」

ニッコリ微笑むメル。

直後。

「!?」

床の空間の歪みから突き出してきた槍の穂先が、ユーリーの頬を掠めた!

「ユーリーお兄様が棄権してもいいんですよ…?」