あたしは言った瞬間

ーーしまったーー

と思った。

せっかく助けてくれたのに
もしかしたら
聞こえなかったかもしれない。


ギュッと手を握りしめて
棗を見ると


『無事ならよかった。』  


フッと笑って
クラス割の発表の場所へ歩いていった。


『葵ー?
 そんなとこで突っ立って
 どーしたの?
 てゆーか!探したんだからね!』


と乃愛の声。


『乃愛こそどこに言ってたの!!
 あたし追いかけたんだけど
 つまづいて転けそうになって…』

今あった出来事を説明しようとした。


『大丈夫!?
 ケガはしてないみたいね。
 よかった…
 ごめんね?あたしは悠くんと
 おしゃべりしてたの。』


乃愛は遠慮がちそうに
呟いた。