「遠藤さんって、笹嶋さんと結構仲いいですよね。どういう話題であの人をその気にさせるんですか?」

 コンパクトに写る綺麗な瞳をきりっとさせて、香澄ちゃんが私を睨んでるのが分かる。
 私は直してもどれぐらい変化してるのか分からないけど、一応身だしなみとしてファンデーションを直すのと口紅くらいはする。
「別に何もしてませんよ。仲がいいわけでもないですし」
「そうですかあ?まあ、笹嶋さんもちょっと変わってますよね」
それだけ言い残して香澄ちゃんは去ってしまった。

 ……笹嶋さんが変わってる?

 香澄ちゃんが笹嶋さんにデートを申し込んで、あっさり断られたのを知ったのは、その次の日だった。
 あの可愛い香澄ちゃんをあっけなく断るっていうのは私も驚いたし、ならどうして私を誘ったのかというのも謎だ。
 どういう人なんだろう。
 本当に変わった人なんだろうか。

 香澄ちゃんは、ちょっと自信があったのに断られたのが相当傷ついたみたいで、雑談だけでも彼に話しかけられている私に嫌味の一つも言いたくなったんだろう。
 私は笹嶋さんのことはちょっと今頭から外れていて、エルと会うべきかを悩んでいた。
 今の私はエルを失うのが何より怖い。
 何年も心の支えだった人なのに、それを会った為に一瞬で失うなんて本当に考えただけでつらい。
 今までは見た目で去る人なんか別にいいやって自分で慰めてきたけど、エルに去られたら内面をいくら認められてもどうにもならないのを知る事になる。

 つい妹の前で涙ぐんでしまった。