｢許すとかの問題じゃなくて、ただ逃げてるだけじゃねぇか｣




時雨の瞳が鋭くなる。




｢ち、ちが…っ｣



逃げてるんじゃない…っ…、





あたしは涙が零れ落ちてしまった。




｢少しずつていいから…信じていけよ…。俺はおまえを傷つけたりしないから…｣




そう言って強い力で抱きしめる時雨に心が少しだけ揺さぶられたのだった。




｢ほら。泣き止めよ。すっごい顔になってるぞ｣





｢…ぐす…っ……ひどい…っ｣





こんな時に顔がすっごいことになってるってとか。




｢ウソ。やっぱり希美は泣き顔でも十分、可愛い。…別の意味で泣かせるのはまた今度かな？おまえが俺を好きになった頃には…｣






｢うわぁっ！！その続き言わないでっ！！｣





絶対下ネタの方に突っ走るところだったよね。






｢希美が寂しいと思った時は、俺がいくらでも傍に居てやるから…｣





時雨はあたしの耳元で、そう囁いたのだった──────……